薬剤師になって1年目だけれど仕事を辞めたい。
職場の先輩や上司が厳しい、思っていた仕事と違う仕事をやらされている、人によって理由はさまざまですが、薬剤師1年目から仕事を辞めたい、と思ってしまう人は少なくありません。
しかし、せっかく薬剤師になったばかりなのに、すぐに転職して大丈夫なのでしょうか?
薬剤師1年目で転職するのは無理なことではありませんが、メリットもあればデメリットもあります。
薬剤師1年目で辞めたいと感じる理由や、転職を考えるうえで気を付けたい点などを解説します。
目次
薬剤師1年目で辞めたい・転職したいと感じる理由
薬剤師1年目で辞めたい・転職したいと感じる理由を解説します。
人間関係に悩んでいる
人間関係の悩みは、離職や転職理由として大きなポイントです。
厚生労働省の調査によると、転職の理由として「職場の人間関係」を挙げた人は男性で約8%、女性で約9.6%です。個別の理由としては、男性は「労働条件」に次いで「職場の人間関係」が第2位、女性は「職場の人間関係」がトップとなっています。
薬剤師1年目は特に現場で研修を受けたり、先輩に指導されたりする局面が多く、人間関係で悩みを抱える人は多くいます。
新人教育の体制が整っていない
新人教育の体制が整っていない場合も薬剤師1年目が転職を考える大きな理由になります。
薬剤師は人の健康や命に関わる重大な責任のある仕事ですが、職場によっては十分な新人研修や教育を行う余裕がないところもあります。
規模の小さい病院や調剤薬局などでは、人手が足りないので十分な研修や教育期間が無いまま仕事をさせられてしまうケースも、珍しくありません。
きちんとした教育を受けていないのに仕事に厳しい、責任が重いなどのプレッシャーで就職1年目から転職したいと感じる薬剤師もいるようです。
給与や休日・福利厚生に不満がある
給与や休日・福利厚生などの待遇面で不満があり転職を考える人も多いでしょう。
マイナビ薬剤師の調査によると、薬剤師の初任給は勤務先によって異なりますが大体以下のようになります。
勤務先 | 初任給平均 |
病院 | 月20~25万円 |
調剤薬局 | 月22~30万円 |
ドラッグストア | 月30万円 |
製薬会社 | 月22万円 |
(引用元:マイナビ薬剤師)
大卒の初任給平均は約21万円となっているので、薬剤師は平均より初任給が高いことが分かります。同じ医療業界の中で比較しても、看護師の初任給は月21万円、助産師は18〜20万円となっていますので薬剤師の初任給は高めと言えるでしょう。
それでも勤務場所は形態によっては薬剤師の給与にはかなり差があることや、休暇や福利厚生が十分でないことが原因で不満を抱えている薬剤師は少なくありません。
特に、薬剤師は基本給が高めに設定されている分、小さな薬局やドラッグストアでは、社会保険などの福利厚生が十分でないケースが多くあります。
残業代を差し引くと手取りが思っていたよりも少ない、福利厚生を考えると将来的に不安など、待遇面での不満から転職を考える人もいます。
結婚や出産でライフスタイルが変わった
結婚や出産でライフスタイルが変わったことをきっかけに転職を考える人もいます。
特に女性はパートナーの転職や転勤、妊娠、出産などで、就職した職場で仕事を継続していくことに不安を感じるケースが多いです。
ライフスタイルが変われば仕事に求める優先順位も変わってきます。
将来的に給与やキャリアがアップするところに変わりたい、ワークライフバランスを考えて福利厚生や休暇の充実した勤務先に転職したいなど結婚や出産を機に転職を考える薬剤師も多いのです。
薬剤師1年目で辞めてもいい?転職前に確認すること
転職したいけれど薬剤師1年目なのに辞めてもいいの?とためらう人も多いでしょう。
薬剤師1年目で転職を考える場合、まず転職前に確認すべきことを解説します。
そもそも希望の条件で転職可能なのか
給与や福利厚生など、待遇面で不満を感じ転職を考えている場合はそもそも自分が希望する条件で転職が可能なのかをしっかり検証しましょう。
「薬剤師1年目で辞めたい・転職したいと感じる理由」で説明したように、薬剤師の初任給は一般平均よりは高めです。今の給与が少ないと感じても、薬剤師の初任給としては標準的であれば、転職したからと言って希望通りの条件を得るのは難しいでしょう。
薬剤師の平均給与を見ると20代の若いうちは給与が低めであることが分かります。
年齢 | 平均年収 |
20~24歳 | 381.3万円 |
25~29歳 | 464.9万円 |
30~34歳 | 564.1万円 |
35~39歳 | 608.1万円 |
40~44歳 | 630.4万円 |
45~49歳 | 641.2万円 |
(引用元・マイナビ薬剤師)
薬剤師は資格だけでなく知識と経験が評価される仕事です。
薬剤師の平均給与は30代から上昇率が高くなり40〜50歳代にピークを迎えます。働く場所を変えても、特に経験の浅い20歳代前半は給与が、低めに抑えられてしまう可能性が高いと言えます。
給与など待遇面での条件改善を転職の目的とする場合は、今の職場が平均的に見てどうなのか、本当に転職したら改善するのかをよく考えましょう。
転職することで悩みが解消されるのか
転職活動を始める前に、まず本当に転職することで悩みが解消されるのかをよく考えてみましょう。
就職1年目は誰しも経験不足で、毎日注意されたり厳しいことを言われたり大変な時期です。ただ目の前の状況や仕事の大変さから逃げたいがために転職を考えているのであれば、職場を変えても同じことの繰り返しになってしまいます。
新人の場合、多くの悩みは経験不足から来るものです。時間が経過すれば自然とできるようになることも多いので、本当に今すぐ転職すべきほどの状態なのか、転職して職場や職種が変わることで改善することなのかをよく考えて判断しましょう。
転職が今後のプラスになるのか
転職することが今後のプラスになるのかもよく考える必要があります。
薬剤師は高度な資格を持つ専門職ですので、長いキャリアプランを考えた方が良いでしょう。
人手不足で薬剤師1年目でも欲しいというところはあるかもしれません。転職先を決める上では、目先の利益や条件で判断するだけでなく転職することが将来的に自分のキャリアにプラスになるかどうか見極めることが大切です。
薬剤師1年目で転職するメリット
薬剤師1年目で転職するメリットはどんなところにあるでしょうか。
薬剤師1年目で転職するメリットを解説します。
1から人間関係を築くことができる
今の職場で人間関係に問題を抱え転職を考えている人にとっては、転職することで新しい人間関係を築くことができるというメリットがあります。
人間関係が一度こじれてしまうと、転勤や異動の少ない薬剤師の職場では自分だけの努力や働きで修復するのは難しいでしょう。転職することで心機一転、新しい人間関係を築くことができます。
ただし、職場で働いている人が実際にどんな人か、自分と合う人かどうかなどは実際に働き始めてみるまで分かりません。職場の人間関係をリセットするのは必ずしも吉と出るわけではありませんので、その点は留意しておきましょう。
新しいスキルを身に着けられる
転職することで新しいスキルを身に着けられるというメリットもあります。
今の職場で初歩的な作業や単純な仕事が多く、将来的にスキルやキャリアアップが見込めないような場合は新しいスキルを身に着けられる職場に転職した方が良いでしょう。
1年目で転職する場合は、前職の独自のやり方や風習に染まりきっていないので、新しいスキルに柔軟に対応できるというメリットもあります。
ただし、新しいスキルを身に着けられるということはまたゼロから新しいルールや、やり方を覚えなくてはいけないということなので、相当の努力がいることは覚悟しておきましょう。
仕事にやりがいを持つことができる
今の仕事にやりがいを感じられないで転職を考えている人は、転職することで仕事にやりがいを持てるようになるかもしれません。
例えばドラッグストアなどに勤務して雑務や接客など、薬剤師本来の仕事とは違う仕事ばかりさせられているような場合などは、薬剤師のキャリアやスキルアップに繋がる仕事ができる職場を選ぶと良いでしょう。
また、仕事の中身は嫌ではないが、人間関係や待遇に不満があってやりがいを感じられていない場合も、転職して条件が改善すればやりがいを感じられるようになるというメリットもあります。
薬剤師1年目で転職するのは厳しい?注意点・デメリット
薬剤師1年目で転職する場合、メリットだけでなくデメリットもあります。
薬剤師1年目で転職する際の注意点やデメリットを説明します。
経験・スキルがないので不利
薬剤師1年目での転職は、経験やスキルが無いので不利に働く可能性があります。
薬剤師は資格を持っていれば良いというわけではなく、ある程度の実務経験が必要とされるからです。
薬剤師専門の就職支援サイト「ファルマラボ」では、一人前の薬剤師と認められるためには最低3年の実務経験が必要と説明しています。
新卒の薬剤師が、「一人前」として認められるまでには、基本的に最低3年間の実務経験が必要だとされています。職場としてはこの3年間を成長の区切りに考えているところも多く、3年の間にひと通りの実務経験を積んでおくべきと言えます。
(引用元:ファルマラボ)
もちろん、転職するにあたって必ず3年の実務経験が必要というわけではありませんが、1年目の薬剤師は経験やスキルが不足していると思われやすいのは事実です。
年収アップが難しい
薬剤師1年目で転職する場合には年収アップが難しいことを理解しておきましょう。
「経験・スキルが無いので不利」で説明したように、一般的には薬剤師は3年程度の実務経験を経て初めて一人前と認められます。
薬剤師1年目の転職は、キャリアとしてアピールできる経験やスキルはほとんど無いので、扱いとしては新卒と同じになります。ですから、新卒で就職した条件以上の収入や待遇を期待するのは難しいということになります。
ただし、20代から比較的給与が高めの職場を選んだり、福利厚生などを削って手取り収入をアップさせるなどいくつか選択肢はあります。薬剤師1年目で転職して年収アップしたいという人は、優先順位を明確にして転職先を選ぶようにしましょう。
辞め癖が付きやすい
1年目での安易に転職をすると辞め癖が付きやすくなるリスクがあります。
また、簡単な気持ちで辞めたわけではなくても、転職活動で相手先から「辞めやすいのでは」「次もまたすぐ辞めてしまうのでは」と思われがちです。
転職活動を始める前に今すぐ辞めるべきかをよく考え、転職活動を始めるに当たっては辞め癖がある人だと思われないよう、前向きな退職理由や転職動機を説明できるよう準備しておきましょう。
薬剤師1年目の転職で失敗を防ぐためのポイント6つ
薬剤師1年目の転職で失敗を防ぐためのポイントを6つ紹介します。
①転職する目的や希望の勤務条件をはっきりさせる
転職する目的や希望の勤務条件を明確にしておきましょう。
転職活動を始める前に目的や希望条件が定まっていないと、具体的な転職先を絞ることができなかったり、活動しているうちに目的がブレてしまったりします。
時間がかかっているうちに焦りが出てきて、とにかく転職することが目的になってしまうような人も少なくありません。
転職する目的や希望の希望条件をはっきりとさせておけば面接時の受け答えもスムーズにできます。
②ライフプランに合った働き方ができる職場を選ぶ
転職する職場はライフプランに合った働き方ができる職場を選びましょう。
転職理由が結婚や出産などライフスタイルの変化であった人はもちろんのこと、自分のライフプランに合わせて転職先を決めることは重要です。
今後20代後半から30代にかけて様々なライフイベントが起こることが予想されます。せっかく転職しても、何かあった時にすぐに辞めなければならないような職場ではもったいないです。
勤務形態や場所などを柔軟に変えることができるか、キャリアを中断しないで済むかなどの点を考慮して次の転職先を選ぶようにしましょう。
③前向きな転職理由を考える
薬剤師1年目で転職をする人は前向きな転職理由を考えて準備しておきましょう。
就職して1年も経たないうちに転職活動を始めてしまうと、どうしても相手先から「癖があるのでは」「またすぐ辞めてしまうのでは」と思われがちです。
かと言って今の職場の悪口を言ったり、過度に問題があるような言い方をするのは絶対にNGです。かえって本人に問題があるのではないかと社会人としての常識を疑われてしまいます。
例えば、職場の先輩が厳しいことが転職理由であれば、自分はもっとスキルアップして仕事をしたいのだが職場が忙しくて指導してもらえないなど、文句ではなく前向きな理由に転換することが大切です。
面接の時に突っ込まれてうろたえることのないよう前向きな転職理由をあらかじめ考えて準備しておきましょう。
④転職先が見つかってから現在の職場を退職する
現在の職場を退職するのは次の転職先がしっかり決まってからにしましょう。
今の職場を辞めたい気持ちが強いと、退職して転職活動に専念したくなる気持ちは分かります。しかし、先に今の仕事を辞めてしまうと万一転職先がなかなか決まらない場合に、焦りや経済的な不安のせいで判断力が鈍ってしまうリスクがあります。
また、薬剤師に限らず一般的に転職市場では、離職期間がある人よりも無い人のほうが転職が決まりやすい傾向があります。
仕事を継続しながらの転職活動は大変ですが、できるだけ次の転職先が見つかるまでは今の職場を退職するのは避けましょう。
⑤内定が出ても焦って転職を決めない
内定が出ても焦って転職を決めずに、自分の転職理由や目的と照らし合わせて本当にその転職先で良いのかをよく考えて判断しましょう。
今の職場を辞めたい気持ちが強かったり転職活動が長引いたりすると、転職自体が目的となってしまい本当の目的を見失いがちです。
転職すれば良いというのではなく、転職先で自分の希望が本当に叶うのか、今の悩みが解消されるのかをよく考えて転職に踏み切りましょう。
⑥転職サイトを利用する
経験の浅い薬剤師1年目の転職では転職サイトを利用するのがおすすめです。
薬剤師専門の転職サイトを利用すれば、未経験や新卒可の案件が豊富に登録されており、地域や勤務形態など自分の希望条件に合わせて検索できます。
現在の職場で仕事を続けながら転職活動をする場合でも、転職サイトを利用すれば時間短縮ができます。
さらに、大手の転職サイトでは経験豊富なキャリアアドバイザーに転職サポートを受けられます。キャリアアドバイザーが無料で、転職先との交渉やエントリーシートの書き方や面接のやり方まで指導してくれますので初めての転職でも安心です。
薬剤師専用の転職サイトには、求人情報だけでなく転職のためのアドバイスや薬剤師のキャリアアップのための情報なども豊富に掲載されていますので参考にすると良いでしょう。
薬剤師1年目の方におすすめの転職サイト3選
薬剤師1年目の方におすすめの薬剤師転職サイト3選を紹介します。
転職サイト | 特徴 | おすすめな人 |
ファルマスタッフ | 若手の転職に強い コンサルタントと対面で相談できる |
・20代・30代の人 ・対面で詳しく転職について相談したい人 |
マイナビ薬剤師 | 求人情報以外の情報も豊富 求人掲載サイトが利用しやすい |
・多くの求人の中から選びたい人 ・転職にかける時間が少ない人 |
ファーマキャリア | オーダーメイド求人がある 質の高い転職サポートが受けられる |
・細かい希望条件がある人 ・初めて転職をする人 |
①ファルマスタッフ
運営会社名 | 株式会社メディカルリソース |
求人件数 | 49,812件(2023年12月26日時点) |
新卒・未経験可 | 20,010件(2023年12月26日時点) |
登録拠点 | 全国 |
転職サポート | 有り |
ファルマスタッフは32年の歴史を持つ薬剤師専門の転職支援サイトです。運営会社のメディカルリソースは,薬剤師を中心に医療関連の人材サービスを全国で展開しており、情報や経験の豊富さに定評があります。
ファルマスタッフは20代・30代の若手の転職に強い薬剤師転職サイトNo.1に選ばれています。(日本マーケティングリサーチ機構調べ)第二新卒向けの勉強会や相談会を実施しているので、薬剤師1年目で転職を考えている人も安心です。
登録するだけで無料でキャリアコンサルタントに相談ができます。キャリアコンサルタントが対面式の面談できめ細かくサポートしてくれます。
②マイナビ薬剤師
運営会社名 | 株式会社マイナビ |
求人件数 | 44,757件(2023年12月26日時点) |
新卒・未経験可 | 16,129件(2023年12月26日時点) |
登録拠点 | 全国 |
転職サポート | 有り |
マイナビ薬剤師は株式会社マイナビが展開する薬剤師専門の転職サイトです。求人案件は4万件以上、さらに新卒・未経験可の募集案件だけで2万件以上あります。
全国に14カ所の拠点があり、経験豊富なキャリアアドバイザーが面談方式を優先して手厚いサポートをしてくれます。地域と業界に詳しいキャリアアドバイザーがただ求人情報を提供するだけでなく、それぞれの求人情報の裏にある生の情報を提供してくれるので転職が初めての人でも安心です。
大手マイナビグループに所属しているので、情報サイトやシステムが充実しているのも魅力の1つです。薬剤師のキャリアアップやセミナー情報などが読めるサイト「薬読」、薬学生の専門情報サイト「マイナビ薬学生Switch」、マイナビ薬剤師の専門アプリなど便利なサービスが充実しています。
③ファーマキャリア
運営会社名 | エニーキャリア株式会社 |
求人件数 | 33,745件(2023年12月26日時点) |
新卒・未経験可 | 6,576件(2023年12月26日時点) |
登録拠点 | 全国 |
転職サポート | 有り |
ファーマキャリアは大手人材紹介会社エニーキャリアが2015年に開始した薬剤師専用の転職サービスです。薬剤師の希望条件に合わせて求人を作り出す「オーダーメイド型求人」を特色としています。
コンサルタントは大手人材紹介会社で、売り上げトップを誇っていた経験豊富な人材を揃え、さらにコンサルタントの担当する薬剤師の数を絞って、質の高いサポートを行っています。
新卒・未経験可の公開案件は少ないですが、非公開求人やまだ求人票になっていない求人を含めてカスタマイズした求人案件を紹介してくれます。
ファーマキャリアでは、スムーズな転職活動を行うために人材紹介サービスを複数社登録するよう推奨しています。ファーマキャリアを他の転職サービスと併用して「セカンドオピニオン」のように使うこともできます。
転職者のニーズに寄り添った質の高い転職支援サービスで、登録から内定までは最短で2日、平均で1ヶ月程度の実績を誇っています。
まとめ
薬剤師1年目で辞めたいと感じる理由、転職をする際のメリット・デメリットなどを解説しました。
薬剤師は専門性の高い職種ですので1年目で転職するのは不可能ではありませんが、デメリットもあります。
離職を決める前に転職することが本当に今後の自分のキャリアやライフプランにプラスになるのかをよく考え、転職の目的や希望条件などを明確にしてから転職活動に移るようにしましょう。