住宅ローン控除は住宅の購入や増改築にかかる費用の一部を所得税から控除できる制度で、年末ローン残高の0.7%または1%程度を所得税から控除できます。
適用することで節税効果を期待できるため、「住宅ローン控除を適用したい」「適用条件を知りたい」と思っている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、住宅ローン控除の概要や適用条件をご紹介します。手続き方法や申告期限なども併せて解説するので、住宅の購入や増改築を検討中の方に必見の内容です。
また、住宅ローン控除は2022年に税制改正があり、税率や控除期間などに変更がありました。本記事では、変更になった点についても最新情報をまとめて詳しく説明していきます。
目次
住宅ローン控除の仕組み
住宅ローン控除とは、年末時点でのローン残高の0.7~1%程度を所得税・住民税から控除できる制度です。住宅を購入する予定のある方の中には、「住宅ローン控除」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
住宅ローン控除は、所得税額から直接差し引きできる控除であるため、大きな節税効果を期待できます。住宅ローンの控除は、入居時から10~15年間適用可能です。
控除を利用できる期間や控除額、上限額などは入居時期や住宅の種類、購入時の消費税率によって異なります。
所得税を節税しながらお得に住宅を購入したい場合は、住宅ローン控除の内容を事前にしっかりと確認しておきましょう。
住宅ローン控除の適用期間と控除率
住宅ローン控除を利用できる年数は、入居日により異なります。実際にどれくらいの期間住宅ローンを利用できるのか、表にまとめたので参考にしてみてください。
入居日 | 控除期間 | 控除終了年 | 控除率 |
2007年 | 10年 | 2016年 | 1~6年目:1.0% 7~10年目:0.5% |
15年 | 2021年 | 1~10年目:0.6% 10~15年目:0.4% |
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2008年 | 10年 | 2017年 | 1~6年目:1.0% 7~10年目:0.5% |
15年 | 2022年 | 1~10年目:0.6% 11~15年目:0.4% |
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2009年~2019年9月 | 10年 | 2018年~2028年 | 1.0% |
2019年10月~2020年12月 | 10年 | 2028年~2029年 | 1.0% |
13年 | 2031年~2032年 | 1~10年目:1.0% 11~13年目:1.0%または物価価格×2.0%÷3 |
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2021年 | 10年 | 2030年~2031年 | 1.0% |
13年 | 2032年~2033年 | 1~10年目:1.0% 11~13年目:1.0%または物価価格×2.0%÷3 |
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2022年~ | 13年 | 2035年~ | 0.7% |
おおよそ10年から15年の間、住宅ローン控除を利用できる内容に設定されています。年度により提供される税率が異なる点に注意しましょう。
住宅ローンが控除(減税)される条件
住宅ローン控除はどのような方が利用できるのか、疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。住宅ローン控除を適用できるのは、以下の条件に合致する方のみです。
以上が基本的な適用ルールとなります。住宅の種類によってはさらに細かく適用条件が決まっているため注意しましょう。具体的には以下の通りです。
【中古住宅を取得した場合】
- 建築後使用されている物件であること
- 建築された日から取得の日までの期間が20年(マンションなどの耐火建築物の建物の場合には25年)以下であること
- 地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準又は耐震基準に適合する建物であること
- 生計を一にする親族や特別な関係にある人から取得していないこと
- 贈与財産でないこと
【増改築した場合】
- 増築、改築、建築基準法に規定のある大規模な修繕又は模様替え工事であること
- 区分所有建物の場合、所有する部分の床や階段、壁の過半について行う一定の修繕・模様替えの工事であること
- 床又は壁の全部について行う修繕・模様替えの工事であること
- 建築基準法施行令の構造強度等に関する規定又は地震に対する安全性に係る基準に適合される修繕・模様替えの工事であること
- 一定のバリアフリー改修工事であること
- 一定の省エネ改修工事であること
- 工事費用が100万円を超えており、居住用部分の工事費用が1/2以上を占めること
【要耐震改修住宅を取得し、耐震改修を行った場合】
- 耐震基準または経過年数基準に適合する建物以外であること
なお、詳しい適用条件は国税庁のホームページにも記載されています。自身が住宅ローン控除の適用条件に合致するか、事前に確認しましょう。
【2022年に税制改正】住宅ローン控除の変更内容
住宅ローン控除の内容は、2021年の税制改正大綱によって一部変更になった部分があります。
主な変更点は、住宅ローン控除の控除率が1.0%から0.7%に引き下げになったことと、控除期間が13年に延長されたことです。また、住宅ローン控除の特例は2021年末までで終了とされていましたが、2025年末までの購入・入居に延長されました。
全体的に見ると、住宅ローン控除による節税効果は小さくなったことになります。ただし、メリットが小さくなったとはいえ、税負担額を縮小してくれる制度であることに変わりはありません。
住宅を購入、増改築する予定のある方は、住宅ローン控除を利用するのが得策です。
改正前 | 改正後 | |
適用期限 | 2021年(居住開始2022年12月まで) | 2022年から2025年まで |
控除率 | 1.0% | 0.7% |
控除期間(新築) | 10年間 | 13年間 |
控除期間(中古住宅) | 10年間 | 10年間 |
借入残高上限額 | 4,000万円or5,000万円 (省エネ性能などに応じて2段階設定) |
3,000万円〜5,000万円 (省エネ性能などに応じて4段階設定) |
年間最大減税額 | 40万円〜50万円 |
21万円〜35万円 |
期間中の減税額 | 400万円〜500万円 | 273万円〜455万円 |
所得要件 | 年間3,000万円以下 | 年間2,000万円以下 |
※2023年末までに建築確認を受けていれば、限度額2,000万円、期間10年
住宅ローンを利用して新築・中古住宅を購入した場合、所得税から控除を受けることができる住宅ローン控除の概要が2022年の税制改正で表のように変わりました。
住宅ローン控除が適用される住宅の種類を細分化し、環境にやさしい住宅ほど控除枠が拡大するようになりました。住宅ローン控除の改正が、節税効果を下げる可能性があるため、住宅ローン控除の改訂内容を把握しておきましょう。
住宅ローン控除を利用するときの注意点
住宅ローン控除を利用する際、注意しておくべき点をご紹介します。
- 住宅ローン控除を利用するための条件に注意
- 住宅ローン控除は上限額に注意
- 確定申告に注意
住宅ローン控除を利用するための条件に注意
住宅ローン控除は、物件によって控除の対象になるものとならないものがあります。
そのため、購入する前に住宅ローン控除の対象物件かどうかを確認することが必要になります。
- 年間合計所得金額が2,000万円以下である
- 金融機関等からのローンを利用する
- 10年以上のローンを利用する
- ローンを組むのは住居人である
- 登記簿上の床面積50平方メートル以上
- 自宅の購入である
これらの主な条件が該当するかを確認しておきましょう。
住宅ローン控除は上限額に注意
住宅ローン控除で受けられる年間の上限額は決まっています。
- 一般住宅:最大21万円
- 省エネ基準適合住宅:最大28万円
- ZEH水準省エネ住宅:最大31.5万円
- 長期優良住宅・低炭素住宅:最大35万円
控除額は「年末時点の住宅ローン残高×0.7%」で計算されることから、一般住宅で住宅ローン残高が3,000万円以上ある場合は、年間最大の21万円分が控除されるという事になりますね。
どのような性能を持ち合わせた住宅を購入するかによって、控除上限額が変わってくることを覚えておきましょう。
確定申告に注意
住宅ローン控除を利用する場合、1年目は確定申告しなくてはなりません。そのため、年末調整をしているため確定申告を普段行わないという会社員の方は、申請方法を知っておく必要があります。
また、2年目以降は年末調整で住宅ローン控除を利用できますが、その際も確定申告の書類とともに、住宅ローン控除の申請書類が必要です。
申請の書類は、初めて住宅ローン控除申請の確定申告をした翌年の10月に税務署から郵送されます。控除期間分をまとめて受け取ることになりますので、なくさないように気をつけましょう。
2024年以降に住宅を購入する際の注意点
2024年以降に住宅を購入する際には次の3つの点に注意する必要があります。
①控除を受けられる借入限度額の引き下げ
2024年以降は住宅ローン控除を受けられる借入金の限度額が以下の通り引き下げられる点に注意が必要です。
住宅区分 | 2022年・2023年入居 | 2024・2025年入居 |
長期優良住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 |
低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 |
ZEH水準省エネ基準適合住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 |
その他の住宅 | 3,000万円 | 0円 |
ただし、2024年1月1日~12月31日までに入居した19歳未満の扶養親族がいる子育て世帯および夫婦のいずれかが40歳未満の若者夫婦世帯に関しては、借入限度額の上限が2022年・2023年入居の場合と同水準まで上乗せされます。
②省エネ基準を満たさない住宅は減税を受けられない
2024年以降の住宅ローン減税は、原則として省エネ基準を満たさないその他の住宅には適用されません。
例外として2023年12月31日までに建築確認を受けているか登記簿上の建築日が2024年6月30日より前である場合には、住宅ローン減税が適用されます。その場合には借入限度額が2,000万円まで、控除期間が10年となるため注意しましょう。
③中古住宅は住宅ローン減税を受けられる要件が緩和される
2024年以降は新築住宅に関して住宅ローン減税の適用基準が厳しくなっていますが、一方で中古住宅については以下の通り条件が緩和されています。
- 築年数に関する要件の撤廃
- 新耐震基準に適合している住宅であれば住宅ローン減税が適用になる
※1981年12月31日以前に建築された中古住宅でも可
1982年以降に建築された中古住宅であれば登記簿上で建築年月日が1982年1月1日以降であることを確認すれば大丈夫です。
なお、1981年12月31日以前に建築された中古住宅で住宅ローン減税を受けるためには、耐震基準適合証明書・既存住宅性能評価書・既存住宅売買瑕疵保険の保険付保証明書の提出が必要となります。
住宅ローン控除の申請手続き方法
住宅ローン控除の申請に必要な書類や手続きの流れについてご紹介します。
手続きに必要な書類
住宅ローン控除の確定申告に必要な書類は、いくつかあります。書類の不備があると手続きが通るまでに時間がかかるため、事前に書類をしっかりと用意しておくことが大切です。手続きに必要な書類は、以下を参考にしましょう。
- マイナンバーを確認できる書類
- 確定申告書
- 住宅借入金等特別控除額の計算証明書
- 源泉徴収票
- 土地・家屋の登記事項証明書
- 不動産売買契約書や工事請負契約書などの写し
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書
- 特例要件(耐震改修や認定長期優良住宅など)を証明するための書類
基本的には上記のような書類があれば手続きできます。ただし、実際にどの書類が必要になるかは、住宅の種類や状況によって異なるため、一律に「これだけあれば大丈夫」とは言えません。
自身のケースに合わせて書類を用意する必要があります。具体的にどの書類が必要か分からない場合は、税務署に相談しましょう。
申請手続きの流れ・方法
住宅ローン控除を申請する際の流れは以下の通りです。
- STEP.1必要書類を集める
申請には、必要な書類をいくつか用意しなくてはなりません。
また、書類に不備があると、手続きが通るまで時間がかかってしまいます。
さらに、住宅の種類や状況によって必要な書類が違ってきますので、前もって自分の場合は必要書類はどれなのかを確認し、準備しておきましょう。
- STEP.2確定申告書を作成する
確定申告書を作成します。
住宅に関する情報を細かく記入したり自分で控除額を計算したりする必要があり、少々難しく感じる人もいますが、順序通りに記載すれば問題ありません。
しかし、忙しくて時間がない方や複雑な計算が苦手な方は、税理士や専門家へ依頼することも可能ですので、検討してみましょう。
- STEP.3税務署に住宅ローン控除の申請をする
集めた必要書類と確定申告書を一緒に税務署に提出します。
これで住宅ローン控除の申請は完了です。
- STEP.4還付金があれば受け取る
1年目の確定申告では、手続き完了後の約1ヶ月半後に指定した口座へ振り込まれますので、忘れずに確認しておきましょう。
住宅ローン控除を利用する際は、初年度に確定申告で「住宅ローン控除の申請」をすることになります。
なお、給与所得者の場合、2年目以降は申請不要です。初年度に1度申請すれば、その後は年末調整の際に申告するだけで、自動的に住宅ローン控除が適用されます。
住宅ローン控除の提出先と期限
住宅ローン控除を受ける初年度は、確定申告書を提出する必要があります。確定申告の期限は2月16日から3月15日までです。期限に間に合わない場合、延滞税や無申告税などを課税される恐れがあるため注意しましょう。
また、住宅ローン控除を利用する方の住所地管轄の税務署に、確定申告書と必要書類をまとめて提出します。提出方法は以下の通りです。
確定申告書類は、国税庁のホームページからダウンロードするか、税務署や役所の窓口で受け取ることができます。
住宅ローンに関するQ&A
住宅ローンや控除に関する疑問を解説します。
住宅ローンの控除とふるさと納税は併用できる?
ふるさと納税は、寄附した金額から2,000円を控除した額を所得税、住民税から控除できる制度です。住宅ローンの控除と、ふるさと納税は併用できます。
所得税から先にふるさと納税の控除が行われた後、住宅ローンの控除が行なわれます。所得税から控除できなかった住宅ローン控除は住民税の控除となります。
住宅ローンを組まなくても控除は受けられる?
資金がある方は、住宅ローンを組まずに住宅を購入する場合もありますが、その場合でも控除自体は受けられます。
ただ入居年数や増築をして、居住した年のみなので、住宅ローンを組んだ時のように長期間の控除は受けられません。
住宅ローンの控除の相談はどこにすればいい?
住宅ローンの控除について相談したい場合は、上で説明した通り、国税庁のサイトで確認することもできますが、相談したい場合は、所轄の税務署に電話で相談するのがおすすめです。
税務署の開所時間に電話が難しい場合は、ファイナンシャルプランナーなどのお金の専門家に相談しても、回答してもらえます。
住宅ローン控除の対象外になることはある?
2024年1月以降に住宅ローンの控除が変更になるため、住宅ローン控除を受けられるのは、省エネ基準を満たした住宅のみです。
長期優良住宅などの借入限度額も減額されるため、住宅の購入を検討している場合は、省エネ基準を満たしているかをチェックしておきましょう。
繰り上げ返済をするなら住宅ローン減税の後?
繰り上げ返済をする場合は、早いうちのほうが金利分の支払いが抑えられるので、お得といわれています。ただ、住宅ローンの減税を受けてから、繰り上げ返済をしたほうがお得になる場合があります。
金利によって、どちらがお得かは変わってくるので、確認してみましょう。
まとめ
住宅ローン控除は、年末のローン残高を基準に、0.7%~1%程度を所得税から控除できる制度です。税額控除の一種で、所得税から直接控除できるため高い節税効果を期待できます。
住宅を購入、あるいは増改築する予定のある方は、住宅ローン控除の適用を検討しましょう。2022年の税改正や手続き方法についてまとめた今回の記事も、ぜひ参考にしてみてください。
監修コメント
住宅ローン控除を利用される際には前もって適用条件をしっかり確認しておきましょう。
特に専有面積などには注意が必要です。1年目は確定申告が必要ということも注意しておきましょう。
居住開始年が2023年以降の場合、借入先の金融機関に氏名、住所、マイナンバー等を記した適用申請書を提出することになりますので2024年以降はローン残高証明書を添付する必要がなくなります。
このように確定申告の際に提出する書類なども今後変更があるかもしれませんので必ず税務署に確認されることをお勧めします。
中村真里子 社会保険労務士
ファイナンシャルプランナー(CFP)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士自身が裕福ではない家庭に育ったことから20代の頃から少額で株式投資を始める。
40代でがんに罹患し家計管理の重要性、社会保険の知識の必要性を痛感する。
家計簿によって家計を立て直し、投資によって資産形成をすることを身をもって経験した今、お金に不安を持つ人の力になりたいとHPで発信を行っている。
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