2024年になってから、テレビやインターネットなどで新NISAが度々取り上げられるようになりました。しかし日本では投資についての理解度がまだまだ低いため、新NISAを始めることについて抵抗がある人も多いです。
NISAとはどのような制度なのか、そして2024年から新NISAになって旧NISAとは何が変わったのかを解説します。
目次
NISAとは
NISAは日本語に直すと「少額投資非課税制度」となり、日本に住んでいる18才以上の人であれば誰でも利用できる投資制度です。
投資と聞くと少なくとも数十万円単位のお金が必要だというイメージを持っている人もいるかも知れませんが、NISAでは100円から投資可能となっており、誰でも投資が始められる制度となっています。
通常、投資で得た20万円以上の利益には20%の税金(所得税15%、住民税5%)が発生しますが、NISAで積み立てているお金に関しては限度額の範囲内であれば税金が発生しません。
現在日本は少子高齢化の一途を辿っており、これまでのような成長は見込めないと言われています。国力が落ちれば通貨の価値も下がります。
つまり、今後円の価値は下がると言われていて、事実2023年から急速な円安が進行しています。
日本人は貯蓄の大部分が現金になっている人が多いですが、円の価値が下がるということは、円で貯蓄したままだと実質貯蓄額は減っていく一方です。
しかしNISAを利用して円以外の資産を保有しておけば、円安になっても資産が目減りすることはありません。
新NISAは何が変わった?いままでとの違いは?
NISAが注目されたのは2024年になって「新NISA」となり、制度が大きく変化したことにより、NISAの資産運用効果が格段に上昇したことと、老後2,000万円問題により老後のお金を年金に頼れなくなったためです。
新NISAにはどんな投資枠があるのか、そして旧NISAとは何が変わったのかを解説します。
つみたて投資枠
新NISAの投資枠は、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」に分かれています。
つみたて投資枠は政府が認可した投資信託商品のみを購入できる投資枠です。
投資手段は積み立てのみで、毎月設定した金額で投資商品を購入することになります。
投資額は自由に設定可能なので、先月は1万円積み立てたが、今月はあまり余裕がないので5,000円だけ積み立てる、といった買い方も可能です。
つみたて投資の年間投資枠は最大120万円ですが、次に解説する成長投資枠の年間投資枠240万円をつみたて投資枠に割り当てることもできます。
成長投資枠の年間投資枠も全額つみたて投資枠として利用するならば、年間投資枠は合計360万円になります。
つみたて投資枠は短期的な利益を狙うのではなく、定期預金のように毎月コツコツ投資信託商品を購入して将来必要となるお金を貯める目的で利用するとよいでしょう。
つみたて投資枠は購入できる商品が限定されているものの、販売手数料がかからず、信託報酬も極めて低価格に抑えられています。
成長投資枠で買える商品と比べるとリターンは小さいですが、その分リスクも低いので、投資初心者はつみたて投資枠で積極的に資産を増やしていくことをおすすめします。
成長投資枠
成長投資枠はつみたて投資のように積み立てで購入も可能ですが、それ以外に一括購入も可能な枠となっています。
取り扱っている商品はつみたてNISAで取り扱っている投資信託の他に条件を満たした株式やETFなど多くの投資商品を購入できます。
成長投資枠の年間投資枠は240万円ですが、つみたて投資枠の時と同様に両方の投資枠を全額成長投資枠で使うこともできます。
両方の投資枠をすべて成長投資枠に使うと、合計年間投資枠の上限は先ほどと同じく360万円です。
成長投資枠はその日のうちに株式を売り買いして短期的な利益を得たり、株式の配当金を得たりするなど、大きなリターンを狙いたい時に利用すると良いでしょう。
また、株主優待を受け取りたい場合も成長投資枠で条件を満たすだけの株を購入してください。
NISAと新NISAの違い・変更点
2024年度より、従来のNISAから新NISAに変わりました。
しかし多くの人がその変更点について理解していません。これまでのNISAと新NISAの違いや変更点について、ここでは解説します。
制度の併用が可能に
ひとつ目の大きく変わった部分は、制度の併用が可能になったという点です。
これまでのNISAでも新NISAと同様に投資信託のみ購入できるつみたてNISAと、投資信託以外に株式などを購入できる一般NISAに投資枠が分かれていましたが、片方の投資枠を選ぶともう一方の投資枠は利用できませんでした。
しかし新NISAではつみたて投資枠と成長投資枠の両方の枠での投資が可能となっています。
例えば投資しようと考えている資金のうち、半分はつみたて投資枠で堅実に投資信託を買い付けし、もう半分では成長投資枠を使って大きなリターンが期待できるベンチャー企業の株を買う、といった資産運用ができます。
もちろん片方の投資枠のみで資産運用も可能となっていて、その場合は両方の年間投資枠の合計額を利用できます(成長投資枠は最大1,200万円まで)。
非課税保有限度額の増加
ふたつ目の大きな変わった部分は、非課税で保有可能な限度額が増加したという点です。
従来のNISAでは、つみたてNISAの非課税で保有可能な限度額は最大800万円、一般NISAは600万円となっていました。
先ほど解説した通り、従来のNISAの場合はどちらかを選ぶしかないので、非課税で保有可能な限度額は800万円か600万円だけとなります。
金額的にはそれなりにまとまった額ではあるものの、例えば老後資金を全額この金額で賄うことはできないでしょう。
一方新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠それぞれの非課税で保有可能な限度額を合算できます。
合算した場合の非課税で保有可能な限度額は1,800万円となり、従来のNISAのつみたてNISAの非課税で保有可能な限度額の2.5倍、一般NISAの非課税で保有可能な限度額の3倍です。
これだけの金額を貯蓄できるならば、老後資金は新NISAでほぼ賄えるといえます。
ただし、成長投資枠は1,800万円のうち1,200万円までしか利用できない点には注意しましょう。
年間投資枠の増加
大きく影響する変化ではありませんが、1年間に投資できる金額の上限である年間投資枠も増加しています。
従来のNISAでは、つみたてNISAが年間投資枠40万円、一般NISAが年間投資枠120万円でした。
それが新NISAでは、つみたて投資枠の年間投資枠120万円、成長投資枠の年間投資枠240万円と大幅に増加しています。
しかしながら、新NISAになって非制度そのものも、課税枠の期限も恒久化されたため、無理に年間投資枠いっぱいに投資する必要はありません。
制度の恒久化
4つ目の大きく変わった部分は、新NISAの制度そのものが恒久化になったという点です。従来のNISAは、制度実施期間が2023年までと定められており(つみたてNISAは2042年まで)、その期間を過ぎるとNISAへの投資そのものができなくなります。
したがって、人によっては制度期間までに非課税で保有可能な限度額いっぱいまで投資できなかったという人もいるのではないでしょうか。
一方、新NISAは2024年以降恒久的に制度を利用できます。
恒久化となったおかげで、これまでのように期限までに非課税で保有可能な限度額いっぱいまでに投資しなければと焦る必要がなくなりました。
非課税枠の期限が撤廃された
5つ目の大きく変わった部分は、非課税枠の期限も撤廃、つまり恒久化されたという点です。
従来のNISAの場合、つみたてNISAは20年間、一般NISAではたった5年間しか保有期間が設けられていませんでした。
この期間を過ぎると通常の投資と同様、20万円以上の利益を得た場合は20%の所得税を支払わなければなりません。
NISAは非課税で投資できるというのが最大のウリなのですが、従来のNISAだとそこまでその恩恵を享受できませんでした。
しかし新NISAになってからは非課税で保有可能な限度額以下の金額であれば、非課税保有期間が無期限となりました。
つまり限度額以内であればずっと非課税でお金を保有できるということになります。
新NISAと旧NISAはまったくの別物!
制度的には新NISAは旧NISAから大きくパワーアップした制度といえますが、制度としては全く別物の扱いとなっています。
したがって、これまで旧NISAでつみたてをしていた人は、一般NISAは2023年度で制度はっ終了してしまっていますが、つみたてNISAは2042年まで制度は継続しているため、つみたてを継続可能です。
そして旧NISAと併用して新NISAでもつみたてを継続可能なので、非課税保有限度枠を合わせて2,600万円分保有できることになります。
ただし、先程も解説したとおり、つみたてNISAの非課税保有限度枠の期限は20年間なので、それ以降資産をどのように保有するかはあらかじめ考えておきましょう。
新NISAへのロールオーバーはできない
旧NISAの一般NISAの非課税保有期間は5年間ですが、「ロールオーバー」という手段を用いることでこの保有期間を延長できます。
ロールオーバーとは、非課税期間が終了したときに翌年の年間投資枠へ移すことです。
あらかじめ定められた保有期限を伸ばす手段と聞くと、制度の決まりに違反する行為のように感じてしまいます。
しかし実は一般NISAの非課税保有期間が終了した時点で、「課税口座に移管」「売却」「翌年の非課税投資枠にロールオーバー」のどれかを選択するよう問われるため、公式に認められた制度延長の方法でした。
旧NISAは新NISAと別枠で保有できるものの、つみたてNISAも2042年で非課税保有期間が終了します。
ならばつみたてNISAの投資分を新NISAにロールオーバーすれば非課税保有期間を恒久化できるのではと考えてしまいがちですが、残念ながら旧NISAで保有していた商品は新NISAにロールオーバーできません。
したがって、旧NISAで保有していた商品は2042年以降、「課税口座に移管する」「売却する」のいずれかの方法で旧NISAの口座から移す必要があります。
ちなみにどちらも選ばなかった場合は自動的に課税口座へと移管されます。
新NISAのメリット
新NISAになって、旧NISAとくらべてどのようなメリットがあるのかを見ていくことにしましょう。
じっくりと時間をかけて長期投資ができる
新NISAになって非課税保有枠も、制度そのものも無期限になりました。
その結果、期限内に急いでつみたてをする必要がなくなったため、じっくりと時間をかけて無理なく投資ができます。
期限があると、期限終了後課税口座に移管するか売却するかの選択を迫られますが、無期限であれば特に必要でなければずっと持ち続けられるのも大きなメリットといえるでしょう。
基本的に長期的に運用すればするほど福利が膨らんでいくので利益は大きくなるので、期限が撤廃されたのは大きな改善点です。
非課税枠が恒久化となったため、売却すれば再度利用できる
非課税枠が恒久化になったため、再度利用できるのも新NISAに変わったことによる大きなメリットです。
新NISAの非課税枠は上限1,800万円で、これをオーバーした分は課税対象となります。
しかしオーバーした分を売却して非課税枠を開けておけば、翌年以降売却した分に関しては非課税枠が復活します。
利率は事前に予測できませんが、その年1,800万円にならないように適宜切り崩すようにすれば、非課税投資枠をフル活用できます。
つみたたて投資枠と成長投資枠が併用できる
新NISAに変わったことによる最大のメリットはつみたて投資枠と成長投資枠(旧NISAでは一般NISA二該当)が併用可能となったことではないでしょうか。
旧NISAではつみたてNISAか一般NISAどちらかしか運用できませんでしたが、新NISAでは両方を併用可能となったため、結果的に非課税で保有可能な限度額が旧NISAとくらべて大幅にアップしました。
また、併用可能となったことから、リスクの小さいつみたてNISAとリターンの大きな成長投資枠両方に投資できるのも大きなメリットです。
新NISAのデメリット
新NISAは旧NISAと比べて非常に多くのメリットがあるのは間違いありません。では改悪点、つまりデメリットは皆無なのかというと、細かく見ていけばいくつかのデメリットはあります。
メリットに続いて、旧NISAから新NISAになったことによるデメリットについても解説します。
成長投資枠では購入可能だった商品が一部対象外となる
新NISAになったことによる1つ目のデメリットは、一般NISAで購入可能だった投資商品が一部対象外となってしまったという点です。
具体的には以下の投資商品が対象外となりました。
- 整理・監理銘柄
- 信託期間が20年未満の投資信託
- 毎月分配型の投資信託
- デリバティブ取引を用いた一定の投資信託
とはいえ、これから投資を始める人にとってはこれら4つが具体的にどのような商品かすら分からないという人がほとんどでしょう。
ほとんどの人にとって、上記投資商品が購入できないからといってデメリットとは感じないはずです。
損益通算ができない
2つ目のデメリットは、旧NISAと同様に新NISAも損益換算できないという点です。
損益換算とは、利益と損失を相殺することで、一般口座などの課税口座ではこの制度が利用可能となっています。
例えばAという一般口座では50万円の利益が出た一方、Bという口座では50万円の損失が出てしまったとしましょう。この場合、損益換算によって利益はゼロとなり、税金を支払う必要がなくなります。
では一般口座で50万円の利益がでた一方で新NISA口座で50万円の損失が出た場合はどうなるかというと、新NISAで出た損失は損益換算の対象外となるため、一般口座で得た50万円はそのまま20%の税金が発生してしまいます。
18才未満の人は講座を開設できない
3つ目のデメリットは、18歳以上にならなければ講座を開設できないという点です。
実は旧NISAには「ジュニアNISA」という制度があり、この制度を利用すれば18歳未満の人でもNISAを利用可能となっていました。
しかし新NISAとなってこの「ジュニアNISA」は廃止されたため、18歳未満の人はNISAを利用できなくなってしまいました。
ではこれまでジュニアNISAで積み立てていた人は制度の廃止以降つみたてていた商品がどうなったのかというと、廃止時点でつみたてている人が未成年の場合は特別に18歳になるまでジュニアNISAで保有可能となっています。
一方、18歳を超えている場合は自動的に課税口座へと移管されました。
NISAから新NISAには切り替えが必要?
NISAから新NISAは別枠であるため、そのまま運用したいのであれば切り替える必要はありません。
ただし先に解説した通り、NISAのつみたてNISAが2042年で終了になるため、それまでに売却するか課税口座に移管するかはあらかじめ決めておくようにしましょう。
新NISAはどういう運用方法がおすすめ?
新NISAではじめて投資をするという人には、「長期投資」「分散投資」がおすすめです。
成長投資枠には高いリターンが望める株式なども売られていますが、投資初心者は成長投資枠には手を出さずにすべてつみたて投資枠で運用することをおすすめします。
制度の制限も、非課税保有限度額の保有期限もないので、銀行の定期預金などのように限度額いっぱいを目指して毎月コツコツ積み立てるようにしましょう。
新NISAに関するよくある質問
これまでNISAについて解説しましたが、まだ説明しきれていない部分もあります。
そこでこれからNISAを始めようとする人から寄せられる質問のうち、3つに厳選してQ&A方式で解説します。
旧NISAの口座を持っている人が新NISAを始めるときは新しく口座開設の手続きが必要?
旧NISAの口座をすでに持っている人は、自動的に新NISAの口座も開設されるため、わざわざ手続きする必要はありません。
NISAをやれば絶対に資産が増えますか?
NISAに限らず投資をはじめとする資産運用には必ずリスクがあります。
NISAも絶対に資産が増えるわけではなく、世界の経済状況によっては原価割れを起こすことを理解したうえで始めるようにしてください。
NISAでやってはいけないことは?
NISAは短期的な利益を得る投資ではありません。したがって、安易に投資商品を売らないようにしてください。
NISAを始めたばかりの人の多くが、価値が下がり続けると一旦商品をすべて売却し、損失を小さくしようとしてしまいがちです。
しかし投資信託は価値の変動を繰り返して最終的に資産が増えるといった商品です。
安易に売って現金に戻してしまうと、いつまで経っても資産は増えません。
価値が下がっても気にせず積み立てを継続しましょう。
まとめ
NISAは100円から始められる資産運用です。
2024年から新NISAになり、つみたて投資枠と成長投資枠併せて1,800万円までが非課税となりました。
通常資産運用で得た利益には20%の税金が発生しますが、新NISAの場合非課税限度額内であれば税金が免除されます。
成長投資枠では個別株なども買えますが、新NISAで投資を始めようと考えている人はつみたて投資枠でコツコツ投資信託商品を買い続けることをおすすをめします。